幌加温泉「鹿の谷」
北海道の国道で最も標高が高い三国峠、石狩、十勝、北見国と3つの国を分けることが由来とされているが、その三国峠を十勝側へ下りた先にあるのが糠平源泉郷、その少し手前にあるのが幌加温泉だ。
小さな温泉地である幌加温泉、開湯は意外に遅く戦後の1921年。その1921年に開業したのが鹿の谷だ。鹿の谷と書いて「かのや」と読むこの温泉、幌加温泉はかつてこの鹿の谷の他にもう1軒温泉宿があったものの2011年より宿主の死去により事実上廃業状態となり、現在はこの鹿の谷1軒のみになっている。その鹿の谷も高齢のおかみさん1人で基本的に切り盛りしているのでこちらも後継者がいないのであれば風前の灯状態でいつ廃業になってもおかしくない状態である。
しかしこの宿はそこらの温泉施設ではない。昭和の匂いがぷんぷんする年季の入った温泉施設で、浴室はもちろん混浴。それどころか洗い場らしい洗い場もなく、浴室には大きめの金ダライに源泉がとうとうと注がれ、それを桶で汲んで頭や体を洗うという昔懐かしい湯治場の姿が今もそのまま残っている。
大きな施設ではないものの、源泉はナトリウム、カルシウム、鉄鉱泉、そして硫黄泉となんと4種類もある他打たせ湯まである。
内湯の浴槽は温泉の成分が岩のように付着し本物の温泉を物語っている。また露天風呂は周りに囲いなどは一切なく野性味あふれる露天風呂で幌加温泉ギリギリまで迫る大雪山系は見せる四季折々の景色の他、周りに民家が一切ないため、晴れていれば満天の星空の下、月が出ていれば月光に照らされながら入ることができ、最高の時を過ごすことができる。なお表示はないが露天風呂が硫黄泉ではないかと思われる。
冬場は道内でも特に冷える場所の1つで、温泉の湯気がそこらの岩に付着して霧氷を産むほか、温泉前にある急な勾配の凍結防止に温泉を贅沢に道路へ流しており、ここから立ち上る湯気が周囲の木々に付着して凍結することで樹氷が発達し、ここでしか見られない独特の美しい風景を産む。
温泉自体もここは効くな〜とはっきり分かるほどの超一級品だ。
ただしこの宿へ宿泊するにはハードルがいくつかある
・公式HPがないのはもちろん、旅行サイトでも予約ができないため、ネットでの予約が不可能。
・電話はおかみさんの耳が遠いため会話は不可能であり、予約はまずFAXで行わなければならない。FAXに宿泊日や人数、連絡先を記載し送信すると、話しが出来る手伝いの方から電話が折り返し来るのでそこで正式に予約する形となる。ただこれだけ予約までのハードルが高いにも関わらず、連休などは満室になることもある。
・宿泊は素泊まりのみで自炊設備あり。ただしコンロがカセットコンロしかないため、宿泊人数が多いと取り合いになってしまうので持参することを勧める。
また鍋類も小さめのものが多いのでこれも持参するとよい。自炊場の前には共同の冷蔵庫、トースター、電子レンジあり。
・宿泊は布団なしの3000円プランと布団ありの4500円プランがあるもおのの、布団なしの場合基本的にはサービスで布団をつけてくれるが、おかみさんが忙しいと布団なしになってしまうので、寝袋などの寝具が必要になる。
・自治体のごみ収集エリア外となるためゴミはすべて持ち帰りとなる。また携帯は糠平温泉周辺以外は圏外になるので注意が必要。
高齢のおかみさんが基本的には1人で切り盛りしているため、出来ることが限られるものの、その出来る範囲でのおもてなしで翌朝には地元のお菓子とコーヒーのサービスがあり、今は希薄になった本当の意味でのおもてなしにも出会うことができる。
なお冬でも宿まで除雪が来るのでアクセスは可能であるものの、いつ休業や廃業になってもおかしくない状態にあるのは間違いないので確実に入りたい場合は事前に問い合わせをすることをお勧めしたい。
余談だが、公共交通は旭川駅と帯広駅を結ぶ予約制都市間バスが1日1往復のみ近くを通るだけであり、バスが運休になる場合周囲は圏外となるため携帯への連絡がつかないので注意が必要。
住所:河東郡上士幌町幌加番外地
電話・FAX:01564−4−2163
営業時間:9:00〜20:00
定休日:不定休あり
日帰り入浴料:500円
シャワーやカランなどがないのでこのタライに注がれる源泉を使って体を洗う
レカ郎ジャッジ
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